染の小道2025開催レポ 実行委員会の主要メンバー紹介編


2月22日と23日に落合第五小学校の体育館で行われた「染のがっこう」。終日多くの来場者で賑わい、体験は満員御礼でした

落合・中井の“染色を軸に街の活性化を目指す”プロジェクト「染の小道」が2月21〜23日に行われました。今回も西武新宿線と都営大江戸線の中井駅の間を流れる妙正寺川に反物が架かり、この日のために染められた97枚のれんが街の商店を彩りました。のぼりを含めると104店が参加しました。

染の小道は、地域内外の住民、染色業界の人、商店主によって構成されるボランティアの実行委員会によって運営されています。一体どんな人たちが携わっているのでしょうか(代表インタビューはこちら)。

今回の目玉企画、落合第五小学校の体育館で22日と23日に行われた「染のがっこう」では、染色作家の着物や反物の展示も行われていました。着物好きにとって特に気になるこの展示場所で、実行委員会の副代表を務める中村隆敏さんが染めについて説明していました。


裏表異なる色で染めることができる独自技術などについて説明する中村さん。多くの来場者の興味を引いていた。反物を求める声には、後日工房で対応します

中村さんは、下落合の神田川沿いで引き染めを行うふじや染工房の3代目です。今回は「染のがっこう」で実演も披露しました。「私にとっては1番の発表の場です。毎年楽しみに参加させてもらっています」。実行委員会に参加したのは24年の春から。「ひょんなことから副代表を引き受けました。何ができるわけではないのですが、皆さんに助けられながら開催まで辿り着けたことに、すごく喜びを覚えています」。


「染のがっこう」で、多くのギャラリーに囲まれて引き染めを披露する中村さん

地域の人々に広く開かれているイベントだからこそ、子どもから年配の人まで幅広く染色の魅力を伝えられます。今回は小物の販売も行いました。「この場所(「染のがっこう」)で、有料の体験や物販ができるようになったのは大きな進歩です。染色のイベントなので協力したい気持ちは当然ありますが、我々にとっては本業。工房で仕事をしていれば収入につながるわけで、特に地域に売り場や工房を構えない作家にとっては、ボランティアでの参加は、なかなか持続可能ではなかったんです。でも、実行委員会の皆さんの尽力で少しずつですが、作家が参加しやすい仕組みができてきています。すごく楽しいですし、やりがいがあります。良い会にしていきたいです」。

地域最大イベントを住民として盛り上げたい

妙正寺川に反物を架ける「川のギャラリー」は、昭和30年代まで染めた反物を川で洗っていた風景をほうふつとさせる、染の小道を象徴する展示です。川に降りて作業する必要があるため、安全面への配慮から、降水量が少ない2月の開催となっています。


川に降りて反物を架ける準備をする桒原浩さんと東研二さん

今年も3日間、小紋や友禅のストック品の再利用と共に、地元の小学生などが大勢で染めた「百人染め」、東京造形大学の学生による作品など、162反が川の上に架かりました。夕方、この反物の撤収現場で末木隆夫さんをキャッチ。末木さんは、中井町会の会長で、「川のギャラリー」の中心メンバーです。今回は地域住民として実行委員会副代表を務めています。


「町内会も染の小道実行委員会も世代交代が課題」と末木さん。「もっといろんな人を巻き込んでいきたい」

末木さん率いる中井町会の方たちが毎年「川のギャラリー」を手伝ってくれるようになり、寺斉橋の西側にも反物を架けられるようになりました。「染色業は、要するにこの地域の地場産業です。それを我々町会としても盛り上げようという気持ちがあります」。


6反1セットで27レーンを架けたり下したり。慣れたメンバーを中心にいくつかのチームに分かれて作業する

毎朝毎夕の反物の架け下ろし作業は、実行委員会メンバーを中心に地域の住人や学生らによって行われます。「いろいろな立場の人がボランティアで携わるからこそ、多様な意見があり、議論が生まれます。それをいかにゴールとする方向に持っていくかが大事です。地域最大イベントという認識を他の町会の方々とも共有し、皆で応援していきたい、もっと発展させていきたい。それが僕の思いです」。

寺斉橋では、丸山博史さんがパンフレットを配っていました。丸山さんは中井商工会の一員で、梅干し店「味覚庵」を経営し、地元に住む、実行委員会の初期からのメンバーです。今回は商店として実行委員副代表を務めています。


「このお客さまの集まりを、いかにお店のために有効活用するか。その辺もますます工夫が必要かなと思っています」と丸山さん

中井には店が約200店ほどあり、その半数以上が「染の小道」に参加しています。「普段は本当に静かな商店街で、こういう賑わいが年に1度でも用意されるというのは、店としてすごくありがたいことです」。

会期中は、着物好きや染色に興味がある人だけでなく、地元の親子連れや訪日観光客など、さまざまな人が街歩きを楽しみます。初めて落合・中井を訪れる人も少なくありません。

「我々商店からしてみると、染色の作家さんにのれんを作っていただき、作品を展示させていただいています。街が華やぎ、それを地域の方々が楽しんで賑わいになっています。皆さんの助け合いと、『おかげさま』の感覚で出来上がっているのが染の小道で、それが私の喜びでもあるし、皆さんに知っていただきたい部分です」。

プロを目指す人にも来てほしい

モダン紅型のおかめ工房代表の山本加代子さんは、生徒11人と共に「道のギャラリー」にのれんを提供し、「染のがっこう」と工房でワークショップも行いました。実行委員会の初期からのメンバーで、今回2回目の開催となった「染のがっこう」の相談役を務めました。「染の小道は、気軽に染めに触れてもらう機会を多く作ってきましたが、もうちょっと突っ込んで染色について皆さんに伝えたいと考えて、『染のがっこう』をやろうとなりました」。


「これをきっかけに、染色の道を志す人たちが集まって技を修得したり、発信したり、作品を作ったりするような場を作っていけたらいいなと考えています。落合・中井はいろんな種類の染めがあるので、そういう場所ができたらすごくいいですよね」と山本さん

今回は染色作家による実演や作品解説、モダン紅型や色挿しのワークショップ、作家による着物や反物の展示、小物の物販などを実施。会場は終日人で賑わい、多くの人が染色の技に触れました。「気軽に参加できる雰囲気でありながら、プロによるトークショーや体験の提供があり、職人の技を知ってもらえるいい機会になったと思います。昔は300件だかあった工房も今は数えるほどになってしまいましたが、今から染色を始めたいという若い人たちもいます。地域を盛り上げながら、日本の文化もつないでいきたいです」。

そんな「染のがっこう」に集まった実行委員会のメンバーをパシャリ。


左から、新宿区染色協議会に所属する染色補正・彩徳の小林茂生さん、「公式ガイドツアー」「染の小道楽しみ方説明会」などを担当する笠井隆太郎さん、ふじや染工房の中村さん、会計などを担当する小木谷晃与さん、ボランティア運営やウェブなどを担当する太田理絵さん、「川のギャラリー」や「染のがっこう」などを仕切る東健太郎さん、デザインを一手に引き受ける泉雄一郎さん

3日間、無事に終わって一安心。4月からまた次回の染の小道に向けて実行委員会が動き出します。来年も楽しみです。(千)

ご興味がおありになる方はこちらへ。

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