染の小道2025開催レポ 実行委員会代表に直撃!編


妙正寺川に反物を架ける「川のギャラリー」

落合・中井の“染色を軸に街の活性化を目指す”プロジェクト「染の小道」が2月21〜23日に行われました。今回も西武新宿線と都営大江戸線の中井駅の間を流れる妙正寺川に反物が架かり、昭和30年代まで川で反物を洗っていた風景を偲ばせ、この日のために染められた97枚ののれんが街の商店を彩りました。

天候にも恵まれ、3日で約1万2500人が来街。中井が大勢の人で賑わう冬の風物詩になっています。



初日の金曜日は、毎年落合第一小学校から第六小学校までの小学生が、自分たちが染めた「百人染め」反物が川に架かっているのを見に来ます


山手通りの高架下での上落合中央町会によるランタンアートフェスティバル。地元の小学生や地域の人々が色付けした提灯を展示しました PHOTO : TOMOYUKI HIGUCHI


上落合中央町会は豚汁などの出店も用意。ホットワインやホットショコラも販売していました PHOTO : TOMOYUKI HIGUCHI


西武新宿線中井駅南口の案内所。目白大学や東京富士大学の学生さんたちが手伝ってくれました


新宿区染色協議会による染色小物の販売コーナー。今年は「ゴジラVS新宿区」限定コラボ商品も販売しました


見どころを紹介しながら街を歩く公式ガイドツアーは外国人向けの英語ツアーもありました


スワンベーカリーではすっかり恒例となった「音の小道」。地元にゆかりのある音楽家8組によるライブが行われました。写真はHIROYUKI×GEN×今井蒼泉さんによるカリンバ×植木鉢タイコ×いけばなのパフォーマンス


地域支え合い支援事業、ささえーる中落合では、染の小道担い手講座で結成された「染一会」が手掛けた展示会が開催されていました

16回目となったこのイベント、実はボランティアの実行委員会によって運営されています。地域内外の住民、染色業界の人、商店主によって構成されており、どの立場も公平に関われるように、副代表は各立場から1人ずつ、代表は各立場のローテーションで決める仕組みになっています。

今回の代表は高市洋子さんです。染の里おちあいの代表理事を務める染色業界人としての参加ですが、染の里おちあいは教室や小物等を販売する店舗も運営している商店でもあり、高市さん自身は中井の住民という全ての立場にまたがる、コアメンバー。実行委員としても初期から参加しており、今回で3回目の代表です。


「『染のがっこう』の開催で駅前エリアの盛り上がりがとても嬉しい反面、少し離れた染の里おちあいへの客足が減ってしまったのが残念。次回はもっと回遊してもらえる工夫も頑張ります!」と高市さん

今回の目玉といえば落合第五小学校の体育館で開催した「染のがっこう」です。前回に初めて実施して、今回2回目。染色のワークショップ(500〜2000円)と実演&トークショーや、作家による着物の展示、小物の販売などが行われました。


染の里おちあいの代表理事兼染の小道2025代表としてイベントの紹介や新宿の染色、その歴史などを語る高市さん


モダン紅型おかめ工房の山本加代子さんのトークショー


新宿区染色協議会に所属する染色補正・彩徳の小林茂生さんによる実演


ボタニカルプリンティングの技法について説明する韓国のカタリナ・リーさん


那須高原で採れた植物や野菜等の不要物によるアップサイクルを目指した「那須染め」やのれんの作品の解説をする染織アトリエBrillanteを主宰するKiyoka Endoさん


新宿区の吉住健一区長による開校宣言で「染のがっこう」がスタート


天然染料の染め屋そめなやによる日本茜染め体験。日本茜伝承プロジェクト提供の茜でシルクポケットチーフを染めるワークショップを実施


染の里おちあいは型を3枚使って着物柄のハガキを染める体験を提供


モダン紅型おかめ工房によるモダン紅型体験。エビやカクレクマノミなどの型を使って染めました


早稲田国際ビジネスカレッジによるハンカチの絞り藍染め体験


作家による着物の展示には着物好きが集まります


作家による着物の展示。友禅作家の象榮さんによる現代的な作品(一番左)から、クラシックなものまでがそろいました


物販コーナーでは染色を身近に感じてもらえるさまざまな小物を販売しました

「今年は東京都の組合が参加してくださり、染めのイベントとして一段格が上がりました」と嬉しそう。東京都工芸染色協同組合が、所属する工房や作家によって「東京手描友禅の小道」として暖簾で商店を飾ったほか、2回目となる「染のがっこう」に染色体験を提供。伝統工芸士による実演を間近で見ることができ、ハンカチへの色挿し体験(2000円)も土日各日70組が参加して楽しみました。


「染のがっこう」での東京手描友禅の伝統工芸士、飯島武文さんの実演


飯島さんのトークショー。終了後も観客からの質問に丁寧に答えていました


東京都工芸染色協同組合のハンカチ色挿のワークショップで参加者に指導する東京手描友禅の伝統工芸士、熊崎和人さん


熊崎さんによるトークショー


金の糸目が置かれたハンカチを染める


老若男女、さまざまな人がワークショップを楽しんだ


「染のがっこう」のワークショップの様子をあたたかく見守る落合第五小学校の古賀靖真校長(当時)

さらに東京都染色工業協同組合もイベントに初協賛。共催者である新宿区染色協議会に加えて、東京都の染色組合が参加することで、より広域から染色のプロが集まり、訪れた人々に“染め”の技術と魅力を伝えました。

大学生や高校生もさまざまに参加

学生の参加も目立ちました。インターンシップ制度を使った大学との連携で、染の小道での活動が単位になります。「単純なボランティアではなく、学生にとってメリットがあることで、深くコミットしてもらえています」。


「川のギャラリー」の反物の架け下ろしを手伝う学生たち


今回は目白研心高校野球部員も手伝いに参戦しました


東京富士大学や目白大学の学生たち


昭和女子大学の学生たちが「染のがっこう」のトークショーの司会や登壇者のアシスタントを務めました

昨年から目白大学と東京富士大学の学生グループが地域の商店を周り、イベントへの協賛参加を集め、暖簾作家とのマッチングや入金を含めて商店とのやりとりを担当。それが大学の単位として認められます。「商店街のリストを基に300社ぐらいの宛名入り案内を、グループごとに配布させて、参加を募ってもらいます。ロールプレイングで話し方などをしっかり教えますが、みんな全然抵抗感なく地域の店を周り、店側も毎年のことで対応に慣れていて、地域と学生のコミュニケーションの機会になっています」。今回は約20人の学生が単位を取得しました。

他にも東京造形大学は川に架ける反物の提供と前回の「染のがっこう」ワークショップの作品展示、サコッシュスタンプラリー企画を実施し、早稲田国際ビジネスカレッジは「テキスタイルの小道」としてのれんの提供と学校オリジナルブランド商品の販売もしました。昭和女子大学の学生も「染のがっこう」運営に携わり、目白研心高校の野球部員も川の反物の片付けや「染のがっこう」会場設営などを手伝いました。

“みんなフラット”な関係が魅力

染の小道の魅力とは?と高市さんに聞くと「みんながフラットであること」と即答。「代表が偉いわけでもなければ、広告を多く出す企業や団体が変に優遇されるわけでもない。伝統工芸士の先生もリスペクトはされますが、会の中ではみんな平等です。誰か1人の力では為し得ないし、みんながフラットに協力して盛り上げる。そこが魅力です」。

最終日夜は中井の居酒屋さんで打ち上げ。みなさま、お疲れ様でした。また来年も楽しみましょう。(千)


最終日夜の打ち上げで記念撮影。幹事の逸見和重さん(手前一番左)は中井商工会の一員で「染のがっこう」のフィクサー、大久保太郎さん(手前一番右)は「百人染め」担当で、「音の小道」のプロデューサーです

ご興味がおありになる方はこちらへ。

参加する! Join us