萬昌院功運寺、吉良家の墓

日本一有名な悪役 吉良上野介の眠る墓

中井の有名人、作家の林芙美子が眠るのは中井からもほど近い、中野区上高田にある萬昌院功運寺。実はこちら、彼女以外にも様々な著名人が眠っている。中でも特に名が知られているのは、年末の風物詩『仮名手本忠臣蔵』の仇役である吉良上野介だ。墓域の片隅に立つ吉良家14代〜17代当主、四基の墓。向かって一番右が元禄15年12月14日(旧暦)深夜の討ち入りによって惨殺された吉良家17代当主、上野介の墓である。上野介のいじめに耐えかねた浅野内匠頭が斬りかかったことをきっかけとして展開するこの物語。しかし実際には斬りかかった理由は未だ不明。そう、上野介の因業は、作者によるフィクションなのである。

「吉良さんの実像は教養も高いし茶人としても一流。討ち入りの詳細も、当時の奉行所が作成した赤穂浪士たちの取り調べ記録と大分異なります。悪者の代表にされた吉良さんは気の毒というほかありません」

そう語るのは萬昌院功運寺の住職、佐々昌樹さん。先代や先々代の頃には、上野介の墓が倒され、唾をかけられるといったことも度々あったというから、物語の力は実に恐ろしい。

他にも戦国武将の今川家、浮世絵師の歌川豊国などが眠る当寺院は知る人とぞ知る歴史探訪スポット。墓石の前に立てば、数百年の歴史の奥深さにしばし時を忘れることだろう。(ム)